血友病の病態・診断・治療
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概要
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血友病研究の発展は医学の歴史の反映といつてよい.血友病は決して少ないとはいえない遺伝性出血性疾患で,診断法の進歩によつてとくに軽症型が発見されるようになつてきた.頭蓋内出血,関節機能障害などによる予後の悪さは第VIII因子,第IX因子を高濃度に含む血液製剤の開発により著しく改善された反面,これら補充療法の普及は時に肝炎,抗凝固因子などの副作用をもたらすようになつた.一方,近年の生化学的免疫学的研究手技の発展により,第VIII・IX因子の精製とそれを抗原とする特異抗血清の作製が行なわれるようになり,第VIII・IX因子が免疫学的にも測定されるようになつた結果,血友病は凝固因子の先天的欠乏というよりも,機能的に不活性な凝固西子の生成による一種の分子異常症であることがわかつた.この凝固活性と抗原性との解離は血友病という疾患の解釈に著しい変革をもたらしたのみならず,これを利用して血友病変異種の発見, von Willebrand病との鑑別,保因者の検出が可能となつた.第VIII因子にかんするさらに詳細な検索により,繁VIII因子は抗原性を示す高蛋白分子部分と凝固活性を示す低蛋白分子部分とから成り,後者の異常が血友病A,前者の異常がvon Willebrand病で,これらのsubunitと第VIII因子のもつ種々の機能との関係も次第に明らかとなつてきた.さらに第VIII因子様抗原が血管内皮,血小板と深い関連を有することがわかつてきた.
- 社団法人 日本内科学会の論文