赤血球酵素異常による遺伝性溶血性貧血
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概要
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1965年G6PD欠乏症が発見され,また筆者がValentineらとともに1961年にpyruvate kinase欠乏症を発見して以来,赤血球酵素異常による遺伝性溶血性貧血にかんする研究はめざましい発展をとげ,血液学者のみならず生化学者,遣伝学者の多大の関心をあつめるにいたつた.例を解糖系にとると,その構成酵素のうちmonophosphoglycerate mutaseを除くすべてのもので(報告に問題のあるものはあるが)欠乏症が見出されている.電気泳動法, kineticsその他の生化学的検索が進むにつれ,従来漠然と正常酵素の量的な産生低下(調節遺伝子変異による)と考えられていたが,一部の例でその可能性は否定できないまでも,ほとんどの例で酵素の構造が異なるが故に機能低下を生じている(構造遺伝子変異による)ことが明らかになつてきた.すでにG6PDではかかるgenetic variantsは104種にのぽり,うち2種では分子内の単一アミノ酸置換が明らかにされた.本稿ではこの領域の全般につき最近の進歩を展望したが,われわれの研究室では電気泳動その他の生化学パラメーターを用いて世界にさきがけて数種のpyruvate kinase variantsを同定したので, pyruvate kinase欠乏症に重点をおいて述べた.異常酵素の性質を生化学的に詳細に検討することは臨床症状への理解を深めるにきわめて役立つ.代謝異常に即した治療法の開発は今後の課題であるが,生化学的なvariantの検討はその手がかりを与えてくれることが期待される.
- 社団法人 日本内科学会の論文
著者
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