運動負荷による循環指標の動態循環指標変動の時間関数としての表現
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概要
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運動負荷は虚血性心疾患の診断や薬物治療の効果判定にひろく用いられているが,負荷の方法や条件設定の違いにより得られた成績も多様で,適正な評価が難しい.著者は厳選された労作性狭心症を対象とし,一律な条件設定のもとにくり返し運動負荷を行ない,循環指標の動態を検討した.階段的負荷漸増法により負荷を与えると,仕事量は時間の1次関数として示され,時間の経過は仕事量の推移を示すことになる.狭心発作が負荷10分以内で発現するよう負荷量を設定し,くり返し負荷を行ない,安静時から発作発現にいたる循環指標の動態を時間の関数として表現した.心拍数の変動は時間の1次関数,血圧の変動は対数関数,心電図のST下降は時間の1次関数として示された. rate-pressure productは負荷の増しにより一定の値に収斂する形態を示し, steady state exerciseにおける酸素摂取量を示すモデル式とよく一致し,心仕事量との相関を示唆した.反復定量運動負荷を用いた薬物の治療効果判定において,指標の変動を時間の関数として表現すると,治療効果はY軸上における平行移動としてとらえられ,対照例やitramin tosylate投与例に比べmolsidomine投与例において血圧とST下降の抑制が有意であつたが,その他の指標については有意の変化を認めなかつた.運動負荷による循環指標の動態を時間の関数として表現する試みは指標の変動を一つのパターンとしてとらえ比較検討することにより,病態の程度や治療効果の判定などにきわめて有用な手段と考えられる.