糖尿病性腎症における糖,脂質代謝の特性にかんする臨床的研究
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概要
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糖尿病性腎症30例(非代償期13例,代償期17例)について,腎機能低下の推移に従つてみられる代謝変動にかんし,とくに糖,脂質代謝を中心に臨床的ならびに実験的な面より検索を試みた.非代償期では代償期に比し,空腹時血糖が低下し, IVGTTのK値は有意に改善していたが,インスリン反応は各時期とも低下し糖尿病パターンであつた,血清トリグリセリド, FFAも非代償期で低下し絶食後の血糖値の低下とFFAの上昇度はともに低下した.脂肪負荷試験時のトリグリセリドの変動は代償期では,上昇が著明で前値への回復は遅延,非代償期の上昇は軽度で4時間後前値に復帰したが,トリグリセリドはいずれも正常に比し高値を示した. LPLの活性および抑制作用は非代償期で低下した. LPL活性についての動物実験で,除膵糖尿病犬のケトージス状態でのデキストラン硫酸負荷試験でLPL活性の低下と前値への回復が遅延したがインスリン治療で回復傾向を認めた.正常人血漿から抽出したLPL抑制物質はα2-グロブリン分画に存在し,これによりラットデキストラン硫酸負荷による血中FFAの上昇ならびに脂肪組織中のLPL活性が抑制された.除膵糖尿病犬でのLPL抑制作用はケトージス状態で顕著であつた.以上のことから非代償期における糖尿病状態の見かけ上の軽症化は,生体の末期状態に相当する低反応性代謝位相と類似するものと考えられる.
- 社団法人 日本内科学会の論文