浮腫の病態生理学的研究-とくに局所因子について-
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概要
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浮腫の局所因子の面からの臨床的研究は少ないが, 131Iヒト血清アルブミン(以下「RISA」と記す)の組織クリアランスが促進,正常,遅延の3型あることが明らかにされている.本研究の目的は,さらにRISAの組織内の拡がりを求め,同時に得られた組織クリアランス値と比較検討することである. RISA (1g/dl, 0.03cc)をヒトの下腿前面皮下に注入,その消失速度と共に,組織内の拡がりを線および面シンチグラムによつて, 48時間後まで経時的に求めた,また下腿前面皮下, 3ヵ所に濃度,量の異なつたRISA液を注入,同様にその組織内の拡がりを求めた.面シンチグラムより線シンチグラムの方が, RISAの拡がりを求めるには好都合であつた.また注入するRISA液の量はその組織内の拡がりに影響したが,濃度の差は影響しなかつた.正常人,粘液水腫では, RISA注入数分後の拡がりは直径4〜5cmで,その後48時間まで殆ど変らず,心臓性,腎臓性浮腫では初め4〜5cm,その後一旦軽度に拡大した後縮小している.かつその拡がつた面積は全体の1%以下で,大部分が5cm以内に含まれた.リンパ浮腫では初め4〜6cmで,大部分が時間と共に増大するが,稀には余り増大しないものもあり,この拡がりの度と組織クリアランス値の間には有意の相関は認められなかつた.すなわち, RISAの組織内の拡がりの経過が,浮腫の種類により特徴があり,組織クリアランスと併用して診断的意義のあることを明らかにした.
- 社団法人 日本内科学会の論文