肺塞栓症における血清診断学的三徴候にかんする研究 : とくに実験的肺塞栓症におけるLDH, LDH isoenzymesを中心として
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概要
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肺塞栓症における血清生化学的診断法として, LDH値上昇, GOT値不変,ビリルビン値上昇がいわゆる生化学的三徴候といわれている.今回著者は家兎において高脂肪食餌下に慢性反復性同種微小凝血塊肺塞栓実験を行ない,血清ビリルビン値, GOT, GPT, LDH活性, LDH isoenzymesおよび組織LDH isoenzymesの変化を検索し,生化学的三徴候とくに血清LDH値上昇の機序について検討した.実験家兎は容易に右心不全状態に至り,しばしば黄疸を示し,血清ビリルビン値, GOT, GPT, LDH値ともに上昇し, LDH isoenzymes分画別活性絶対値にてLDH1,4,5の上昇がみられ,慢性心不全に伴う肝障害と溶血機転の存在が推察された.また大動脈,肺動脈の中内膜層,肺のLDH isoenzymes分画像は,いずれもM型への移行を示し,組織における慢性の酸素欠乏状態に対する,酵素の適応現象を示唆した。また肝では逆にH型への移行がみられ,酸素欠乏による組織の破壊過程を反映しているようであつた.
- 社団法人 日本内科学会の論文