慢性心・肺疾患の心機能と肺循環に及ぼすpropranololの影響
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概要
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慢性心疾患17例,慢性肺疾患10例にpropranolol 5mgを肺動脈内に注入し,その前後の心機能ならびに肺循環について比較検討した. propranolol投与後,両疾患群とも,心拍数,心指数,心仕事量の減少をみたが,右室のrate-pressure productの変化は,心疾患群では減少し,肺疾患群では,軽度増加する傾向がみられ,酸素消費量の増加する傾向と併わせて,右室筋における酸素需要の増加および呼吸仕事量の増加が推察された.さらに, propranolol投与後,肺疾患群においては,心疾患群に比べ,肺血管抵抗増大は大きく,かつ,肺血圧の軽度上昇をきたし,心疾患群と対照的であつた.このことは,心疾患群においては,心拍出量減少によるpassiveな肺動脈圧の下降と考えられ,一方,肺疾患群における肺血管抵抗増大は心拍出量減少のみによるものではなくてpropranololによる肺血管収縮作用による可能性が考えられた.以上から,肺疾患患者におけるproprano1olの投与は,肺循環障害を増悪させることがうかがわれ,その適応にかんしては慎重でなければならない.
- 社団法人 日本内科学会の論文