尿および血清揮発成分にかんする研究
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概要
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糖尿病患者の尿に特異な臭気成分の存在が指摘されている.今回独自の方法で捕集した尿揮発成分をガスクロマトグラフィーにより分析し,アセトアルデヒド,アセトン,メタノール,エタノール等14の成分を認めた.血清揮発成分も同様な方法で分析し,尿揮発成分とほぼ等しい成分を認めた.一方捕集した尿および血清揮発成分の生物学的活性を家兎およびラットを用いて検討し,著明な血管透過性亢進作用と血管損傷作用を認めたが,血糖には影響をおよぼさなかつた.さらに,この血管透過性亢進作用はestrogenで抑制された.蔗糖負荷により血管損傷を起こした家兎群では対照群に比較して尿揮発成分が高値を示した.臨床的には糖尿病および老年者では,若年健康者に比較して尿および血清揮発成分とも高濃度であつたことから,これらの揮発成分が糖尿病や老年者にみられる血管損傷の成り立ちに何らかの関係を有すると考えられた.血清揮発成分は運動負荷によリアセトンの減少とエタノールの増加を認め,ブドウ糖負荷によりアセトン,エタノールが減少し,メタノールが増加した.これら微量の生体揮発成分の捕集方法と分析方法について若干考察を加え,さらに病態生化学的意義について述べた.
- 社団法人 日本内科学会の論文