末梢神経障害にかんする電気生理学的研究 : 誘発筋電図におけるM波の再検討
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概要
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末梢神経運動線維の最大伝導速度(MCV)は末梢神経障害の指標として臨床的に広く利用されているが,その応用範囲は限られている.これは運動線維の中でも伝導速度の比較的遅い線維のみが障害される場合があるためと思われる.著者は末梢神経を経皮的に電気刺激し,その支配筋より導出される活動電位(M波)の持続時間が,刺激点と筋の距離が遠くなるにつれて延長することに着目し,おそい線維の障害を数量的に表わすことを試み,その臨床的応用を志した.すなわち同一神経幹上の二点A, Bを刺激して支配筋より得た同一波型を示すM波の持続時間D, dを測定し,伝導距離1m当りのdの変化率をδ=D-d/ABとして表わした.各種神経炎,非特異性脊髄炎症,ギランバレー症候群,神経原性筋萎縮症でMCVが正常でもδ異常例を多く見出した.神経炎において神経症状とδ異常率の比較を行ない,また治癒後にはδ値は正常化することを示した.さらに若干の実験的検討を併せ行ない,δは末梢神経障害の新しい指標となりうることを示した.