動脈壁凝固線溶能にかんする研究 : 第II編凝固系および線溶系因子について
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概要
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動脈壁の凝固系および線溶系因子を検索し,それらの因子と動脈硬化との関連について検討した.新鮮剖検例より得た人胸部大動脈壁を生食水とともにhomogenizeして得た抽出液には,組織トロンボプラスチン活性およびChandlers tubeによる血栓形成時間の短縮効果が認められ,これらは年令とともに活性の増加がみとめられ,とくに粥状硬化とは強い相関々係が認められた.また強い血小板第3因子様作用とADPに比すべき血小板凝集作用が証明された.線溶系因子ではplasminogen, activator, proactivatorの存在が認められたが, antiplasminは証明されなかつた.これらは若年者に高い活性を示す傾向がみとめられ,とくにadventitiaに強い活性を認めた. antithrombin III activatorの存在も認められたが,年令差,硬化度との相関はみられなかつた.次に抽出液の家兎血管内注入により,血管内凝固亢進による血管内凝固がひき起こされ,組織所見で肺臓・肝臓に血栓形成が認められた.以上の成績より大動脈壁の抽出液には各種凝固・線溶系因子が存在し,これらの活性が血栓形成,ひいては動脈硬化の発生原因として重要なる意義を有するとの結論を得た.
- 社団法人 日本内科学会の論文