胃液分泌にかんする臨床的ならびに実験的研究とくにCa++, Mg++の変動を中心として
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概要
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胃液分泌にかんして, 胃壁における各電解質の分泌および吸収機構, また胃液, 胃粘膜組織, 体液内電解質の相互間の移動についてCa++, Mg++濃度を中心として研究せんとしたもので, 臨床例254例, 動物実験 (成犬) 68例を用いて検討を行なつた. 胃液Ca++, Mg++濃度はhistamine dihydrochloride刺激により減少を示し, H+濃度の高いものではCa++, Mg++濃度は低い傾向をみた. 疾患別の検討では刺激後の変動差は十二指腸潰瘍で大で, 胃癌で小となり, 胃粘膜の萎縮の程度 (胃カメラ像) の強いものほど, 小となる傾向をみた. 胃液Ca++, Mg++の絶対量について検討したところ, 刺激後分泌量は増加しており, Ca++, Mg++の濃度における変動は水分泌の方が溶質分泌よりも亢進されるために生ずるdilutionが関与しているものと推察される. また胃液各電解質間ではCa++とMg++, Ca++とNa+, Mg++とNa+は同様の変動傾向を, Ca++とH+, Ca++と遊離塩酸度, Mg++とH+, Mg++と遊離塩酸度は逆の変動傾向をみた. さらに電解質代謝に関係のある薬物 (acetazolamide, 水銀利尿薬, prednisolone, ouabain, spironolactone, chlorthalidone) の影響をみたが, 胃液ならびに組織のCa++, Mg++に対しては著明な影響をみないようであつた. 組織Ca++, Mg++は幽門前庭部と胃体部で量的に差がなく, また胃液内電解質濃度とは明白な相関性は認められなかつた.
- 社団法人 日本内科学会の論文