癌患者血清α-リポ蛋白について
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概要
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血清に弱ビウレット反応を行なう時, リポ蛋白に類似した吸収スペクトルを認めるが, 490mμに吸収極大を示す分光学的特性を利用するα-リポ蛋白の新定量法を考案し, 健常者および諸疾患患者の血清α-リポ蛋白値を検討した. 癌患者の血清α-リポ蛋白値はやゝ特異的とみられる低値を示し, 血清総コレステロール値との相関性もその均衡の崩れが注目される. しかし血清α-リポ蛋白値の異常低下は, 癌疾患時においてのみ認められる所見ではなく, ネフローゼ症候群, Kimmelstiel-Wilson症候群, 骨カリエス, その他血清アルカリ・フォスファターゼ活性の異常な上昇を伴なう諸疾患時にも認められる. また癌疾患時の本法値の低下は, 各臓器癌で相違がみられ, 前立腺癌, 胃癌患者血清では, その低下率は異常な高率を示すが, その他の臓器癌では60-70%が低下するにとゞまる. また原発性肺癌例では異常低下を示さず, 他に転移巣を伴なう症例にのみその低下を認めた. 癌疾患時の血清リポ蛋白値の異常低下は, 脂質および蛋白の代謝異常のみならず, 関連する諸因子の関与が窺われる.
- 社団法人 日本内科学会の論文