腺熱病原体の螢光抗体法による免疫学的研究
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概要
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腺熱の病原学的研究の一環として,とくに蛍光抗体法間接法を用いて, rickettsia sennetsuの免疫学的性状の究明と,併せて腺熱の特異血清診断法への応用を企図した.すなわち各地で発病した腺熱患者から分離した宮山株(福岡),吉本株(広島),小嶋株(八代)ならびに浜砂株(宮崎)および対照としてr. orientalis大関株とKarp株とを組織培養L細胞に培養して抗原とし,またこれらの各株による感染ハムスターから抗血清を作成し,腺熱患者血清としては,宮崎市,北九州市および広島市で発病し,病原分離に成功した患者のうち,経過を追つて採血しえたものを用いた. r. sennetsu接種ハムスターの蛍光抗体価は,接種2週後に上昇しはじめ, 4週後に最高値に達したのち,少なくとも10週までその価を持続し,感染の経過と一致した.各地の腺熱患者から分離されたr. sennetsuの各株は交叉試験の結果,いずれも同一の免疫学的性状を示し, r. sennetsuとr. orientalisとの間には類属反応は認められなかつた.さらに,腺熱患者の回復期血清には蛍光抗体価の上昇を認め,用いた抗原が比較的長期の保存に耐えうることとも併せて,本法は腺熱の特異血清診断法として用いうる最も優れた方法と考えられる.