色素異常沈着を伴なつた本態性低蛋白血症の1例
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概要
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47才の男で,浮腫,血溝蛋白低下,色素異常沈着および四肢末梢の弛緩性運動麻痺および知覚異常を主な症状とし,アイソトープ使用によりidiopathic hypercatabolic hypoproteinemiaの診断に至つた症例について報告した.血清蛋白は最低値で4.8g/dlであり, A/Gは1.2であつた,窒素平衡は負を示したが,高蛋白食摂取時には正であつた. RISA使用によるアルブミン代謝測定で,生物学的半減期は対照の15日に比べて7日と短縮しており,異化亢進を示した. 131PVP使用によるゴルドン・テストでは屎中排泄率が0.9%で,消化管への蛋白漏出は考えられず,胃X線像,胃カメラ所見,腸バリウム所見,さらに組織学的検査からも,いわゆるexsudative gastroenteropathyは否定できた.一般検査により内分泌障害,とくに,間脳下垂体副腎系の軽度の変調がうかがわれたのであるか,病理学的検索で,全身にわたる結合織の脂肪沈着の増量がめだつ以外,低蛋白血症の原因と思われる病変はつかみ得なかつた。トリプトファン試験を行なつたところ,対照とは異なる結果が得られた.その意味づけは困難であるが,蛋白代謝の異常を推測できるものであろう.本症例は近年強調されている消化管内への蛋白漏出を認めず,蛋白代謝障害にもとづく狭義の本態性低蛋白血症といえると思う・併存せる神経症状ならびに色素異常沈着は従来の報告例に見られないものであり,興昧ある症例と考えられた.
- 社団法人 日本内科学会の論文