実験的肝傷害の血管変化の逐時的観察 : 特に硬変時組織像と血管変化との関連
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概要
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従来硬変肝の肝内血管構築については多くの報告がみられるが,これらの報告はすべて完成した肝硬変の血管変化を指摘しているにすぎず,これらの変化が正常肝より肝硬変に成立して行く場合どのような過程で発生するかについては解明されていない。そこで正常肝より硬変肝へ成立して行く過程および種々の程度の傷害肝から治癒ないし回復へ向う過程について,主として肝内血管系の変化と組織像を中心として観察した。1.硬変化進展に従つて肝血管系の変化は,始めにSinusoidの変化,ついで肝静脈,門脈,門脈肝静脈吻合,肝動脈床の増加,門脈-肝動脈吻合の順に出現した. 2.硬変化進展に従つて肝静脈血管内腔容積の減少ならびに軽度の門脈血管床の減少が認められ,それと共に門脈幹直径の増大および門脈圧の上昇認めた. 3.門脈-肝静脈吻合は硬変化進展時には肝内末梢部に多く認められ,再生時には肝門部に著明に認められた. 4.組織学的に未だ小葉改築を認めず結台織が中心静脈間を軽度に連結している時期を前硬変状態とすれば,前硬変状態ないし硬変肝とも云うべき肝に再生を起こさしめると,肝静脈血管内腔容積は更に著しく減少し,傷害発生時より更に輸出血管抵抗の増大を来たし,門脈圧の上昇と共に門脈幹直径の増大を来たした.
- 社団法人 日本内科学会の論文