甲状腺と赤血球産生の関係とくに甲状腺機能低下における造血能の検討
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概要
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甲状腺と赤血球産生との関連を明らかにする目的で,甲状腺機能低下時の造血能の実態につき臨床的並びに実験的に検討を進め,これとerythropoietin (Ep)および甲状腺ホルモンとの関連について検索した. 5例の甲状臓機能低下症患者はいずれも種々の程度の貧血を認めたが,赤血球の形態異常なく,骨髄は低形成性でG/E比の上昇がみられた.血清鉄の低下と不飽和鉄結合能(UIBC)の上昇を示したのは1例のみであつたが, 3例は貧血の改善に鉄剤の併用を要した. ferrokineticsにおいて血漿鉄消失速度(PID)は正常上限であつたが,赤血球利用率(% RCU)は正常であつた.赤血球寿命は軽度短縮した. Ep活性はいずれも低下し,治療により基礎代謝率が正常化するとEP活性も正常化し徐々に貧血は改善した. 甲状腺摘出家兎は貧血発現し骨髄の低形成化, G/E比の上昇, PIDの遅延および% RCUの低下も認めた.血漿中heme合成促進因子(HSAF)およびEp活性共に低下した,瀉血あるいは低圧による低酸素刺激を加えると造血能は亢進し, HSAFは上昇した.以上より甲状腺機能低下又は脱落に基づく貧血は造赤血球能低下を主因とするもので,この際甲状腺ホルモンの欠乏による酸素消費の減少がEp産生を低下し,これが造赤血球能を低下すると考えられる.
- 社団法人 日本内科学会の論文