自律神経失調症の臨床的および機能的研究
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概要
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不定な幾多の愁訴を有し,一般の内科学的検査を行なつても,特別の器質的疾患の見出されない患者の中には,自律神経失調症がかなり含まれているものと考え,これらの患者の臨床像や種種の統計的観察を行ない,又種々の自律神経機能を各種の自律神経安定剤の治療効果と比較し次の結果を得た.これらの患者の主訴としては全身性愁訴が多く,又神経筋性愁訴,循環性愁訴,胃腸性愁訴等に広く分布しており,これらの愁訴に対して安定剤が有効な場合が多く,統計的には,夏期や季節の変り目に多く,女子及び若年者に多かつた.又既往歴や既往の診断にも自律神経失調に関連ある事項が多かつた.従つてこの中には自律神経失調症が多数含まれていることが予想された.安定剤による治療効果と各種自律神経機能検査の比較では,呼吸試験は健康人に比し異常者が多かつたが,安定剤有効群と無効群では明らかな差異を認めなかつた.立位T減高も同様であつた. Wenger testでは有効者も無効者も殆どが健康人の変動範囲内にあつた. Mecholyl試験では,有効群は諏訪法で判定し殆どが異常値を示し,治療後は殆ど正常値になつた.無効群では治療前に正常値を示すものが多く,治療後は殆ど不変か,又は異常の方向に変動したものが多かつた.以上の成績から,機能的愁訴を有し,診断の困難な症例の中には自律神経失調症が多数含まれており,治療成績及び各種の検査成績からその過半数が自律神経失調であることを知つた.
- 社団法人 日本内科学会の論文