顎口虫に起因すると思われる肝肉芽腫の1治験例
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概要
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40才の女子で,既往にライギヨを食べたことがあり,昭和34年4月数囘の胆石痛発作をくり返したため,胆石症と診断して同年6月開腹術を行なつた際,偶然にも多発性肝肉芽腫の合併を見出した.術前並びに術後に頑固な微熱と末梢血の著明な好酸球増多がみられた. 8月下旬から主に腰殿部に移動性皮下腫脹を来たすようになり,顎口虫の皮内反応が強陽性であつたため,スパトニン錠(diethylcarbamide)の内服を2週間行なつた後,この皮下腫脹を切除した.その後皮下腫脹は消失し, 11月頃から末梢血の好酸球増多は著明に減少し始め,微熱も漸次間歇的になつてきたので,昭和35年1月再度開腹したところ,肝の肉芽腫様結節は全く消失して硬変像を呈した.以上のことからわれわれの観察した多発性肝肉芽腫は顎口虫体あるいは虫体成分を核として起こつた一次アレルギー性炎に起因すると考えられる.
- 社団法人 日本内科学会の論文