脳循環と脂質代謝に関する研究
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概要
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血中脂質殊にコレステロールが腦動脈硬化に及ぼす影響を知る目的で,本態性高血圧症30例,腦動脈硬化症6例,腦卒中21例,並びに対照群と見做し得る雜疾患19例計76例について, N2O法によつて得た腦循環諸量を血中脂質特にコレステロールと比較檢討した.総コレステロールは肥滿度と最も相関が強く, 30才以降では増加するが70才以降では減少する.一方腦血流量は年令と共に減少の一途を辿る.從つて総コレステロールと腦血流量は若年より50才乃至60才迄は年令を介して,即ち肥滿の因子を介して逆相関にあるが,老年者においては然らず.腦血流量の著しい低下を認める腦卒中後遺症患者の総コレステロールは,同年令の他の疾患に比して高値を示さない.また年令,肥滿度を考慮に入れると,高血圧症では総コレステロールは必ずしも高くない.以上は脂質代謝と腦動脈硬化の関連を否定するものではなく,脂質代謝以外の因子の存在を示唆するものである.
- 社団法人 日本内科学会の論文