腫瘍細胞の微細構造に就いて制癌物質殊にCitralによるその変化
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概要
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光学顕微鏡下において,腫瘍細胞にいくつかの特異な形態学変化が挙げられるが,病理学者は之を正常細胞からの本質的な相異とは見なさない.牧野氏は吉田肉腫細胞の有糸分裂中期に於ける,染色体の形態的の変化を認めた.この様な予備知識の下に,電子顕微鏡下に吉田腹水肉腫及びエールリツヒ腹水癌細胞を検するに,核では核膜,核小体,クロマチン網の構造においては正常細胞に比し大した変化を認めない.細胞質内の微細顆粒は正常細胞のそれに比し,数量的には著しい減少を見るも,質的には著変を見ない.同様に有糸分裂の前期,中期,後期,終期の何れにおいても正常細胞のそれに比し,著明な変異を見ない.著著は過去十数年に亘つてCitral及びCitronellalを用いて,人類癌腫の化学療法を施行し,それによる胃癌の治療後7〜8年乃至十数年に亘つて,健康を享有しているものが5名を数える.今その作用機構説明の一端に資せんため,厳格なる対照設定の下に,少量のCitral注射後13時間目に採取した腫瘍細胞の電顕像を検するに,休止期核のクロマチン網,核小体,核小体,核膜に微細構造の変化を認めた.又細胞質内でミトコンドリアよりはマイクロソームにより著明な変性を見た.以上の所見と先進諸家の知見とに基づいて, Citral作用機構に関し,若干の考察を試みた.