サリチル酸塩の肺生理学的意義に関する研究
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概要
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肺不全患者(主として慢性肺気腫および濕性肋膜炎患者)の治療の対策の一つとして,サリチレート大量投輿による効果を主として心肺諸動態を中心に檢討し, 1)換気量,酸素攝取量の増加,動脈血炭酸ガス分圧の低下,動脈血pHおよび酸素飽和度の上昇などガス血液分布障害の改善をみた.また心拍出量の増加,肺動脈本幹平均血圧の下降を示し,かつ体血圧は,ほゞ不変であった. 2)しかしながら,換気量,酸素攝取量および心拍出量の増加にもかゝわらず,動脈血炭酸ガス分圧,pHおよび酸素飽和度の変動を生じない症例を経驗したこと,および糖質代謝より代謝性影響を認めたことは,肺不全患者のAnoxemiaおよびHypercapniaを改善する治療として,必ずしも有効な作用を持ち得ないことを示唆している. 3)サリチレート血中濃度がほゞ15mg per cent以下のものでは,気根および血液相に及ぼす効果はほとんど認められなかった. 4)炭酸ガス吸入試驗により呼吸中樞感受性の増加を認めた. 5)サリチレート大量投與と中毒症状および心肺諸動態の改善がみられる量とを檢討し,pro kg 60〜70mg(血中濃度20〜30mg per cent)が妥当と考えられる. 6)サリチレート大量,長期投與により,下垂体副腎系が刺激されているという結果を得た.
- 社団法人 日本内科学会の論文