肝切除限界の拡大に関する実験的研究 : 特に拡大肝切除後の病態とTestosterone前投与の効果
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概要
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従来容認されてきた肝切除限界を拡大する目的で雄性雑種成犬を用いTestosterone(Teと略)を前投与して84%の拡大肝切除を施行し,術後の病態を主として残存肝における脂肪浸潤や脂質過酸化反応の立場から検討した.84%肝切除後は残存肝組織中に著しい脂肪浸潤と過酸化脂質の増加が認められ,術後1週及び4週の生存率はそれぞれ33.3%, 22.2%と不良であった.Teを前投与すると残存肝における脂肪浸潤や過酸化脂質の増加は有意に抑制され,生存率も1週で61.5%,4週では46.2%と改善した.また84%肝切除後の残存肝ではcatalase活性が著明に低下したが,Te投与によりその低下は軽減し,フリーラジカルの生成が抑制されることが示唆された.以上,Teの前投与により拡大肝切除後の残存肝にみられる脂肪浸潤や過酸化脂質の増加,フリーラジカルの生成という悪循環が抑制され,残存肝機能障害を軽減して拡大肝切除を可能にすることが明らかにされた.