原発性肝癌の病理形態学的研究 : 肝細胞癌における肝内発育先端部の超微細構造について
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概要
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手術によって得られた肝細胞癌(HCC) 38例のうち,2例の類洞型,6例の置換型肝細胞癌につき,光顕,透過電顕像を検討した.(1)類洞型発育様式をとるHCCの多くは,主として類洞内を,時にDisse腔内を浸潤性に発育している.癌細胞はDisse腔内浸潤巣ではcollagen,basement membrane-like substance間を発育し,類洞の内皮細胞,collagenには変性,萎縮あるいは消失がみられ,癌細胞が直接,正常肝細胞に接している像も観察される.類洞内浸潤巣では,癌細胞は類洞の内皮細胞,Disse腔内のcollagenに影響をおよぼしている.この型の発育を示すHCCでも,類洞ではmicrofilamentを有している内皮細胞は比較的よく残存している.癌細胞はvilliが少なく,rER, mitochondriaなどの発達は不良で,癌細胞相互の結合状態も悪くstud-like projection, desmosomeなどの接着装置はみとめられない.(2)置換型発育様式を示すHCCは癌細胞は主としてDisse腔内において,肝細胞と置換しながら発育している.肝細胞と置換している境界部では癌細胞索は,類洞により囲繞されてはいるが,内皮細胞に変性像がみられ,癌組織内の血洞ならびに内皮細胞とは形態をことにしている.癌細胞は胞体内小器官の発育は比較的未熟であるが,癌細胞相互の結合状態はよく保たれ,stud-like projectionやinterdigitation,ごく一部にdesmosomeがみられ,胆毛細管の形成にあずかっている癌細胞相互にはjunctional complexをみる.1μm. large section Giemsa染色所見はよく電顕所見と一致している.
- 社団法人 日本肝臓学会の論文