肝動脈,門脈,胆管各分枝同時遮断の研究 : 特に非遮断側肝葉における肝障害の発生機序について
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概要
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犬の全肝の40%領域の肝動脈・門脈・胆管各分枝(A・P・B)を同時に遮断すると全例が3日未満の早期に死亡したが,ペニシリン(Pc)投与下では61.5%が1週以上生存した.Pc非投与群ではPc投与群に比し肝機能は有意に不良で,組織学的には遮断側肝葉,非遮断側肝葉ともに高度の肝障害を示した.Pc非投与群ではまた,endotoxin (Et)値が末梢血や遮断側及び非遮断側の胆汁中,或は肝静脈血中で術後24時間目に有意に高値を示し,過酸化脂質量も末梢血中や遮断側及び非遮断側肝組織中で著明な高値を示し,非遮断側の肝組織血流量も有意に減少した.一方,Pcを投与したり,術後6時間目に遮断側肝葉を切除するとこれらの変化は改善した.すなわちPc非投与下で全肝の40%領域のA・P・B同時遮断を行うと致死的であり,その機序として遮断側肝葉に発生したEtにより高Et血症が生じ,非遮断側の肝血流量は低下し著しい脂質過酸化反応を惹起して,非遮断側肝葉の高度の障害を招来し,不可逆的状態に陥るものと考えられた.