一過性のα-フェトプロテイン上昇を契機にアンギオエコーで発見され : 超音波上陽性になる過程を観察しえた肝細胞癌の1例
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概要
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症例は59歳男性.C型肝硬変にて観察中,超音波検査では異常を認めなかったがα-フェトプロテイン(AFP) 370ng/ml, LCA peak3 60%と一過性に上昇し肝細胞癌の合併が疑われた.CT・血管造影では異常を認めなかったが,アンギオエコーで肝S<SUB>7</SUB>にφ12×16mmのpositive enhancementが認められた.超音波検査による厳重な経過観察中,4カ月後不鮮明な陰影が同部に出現,7カ月後には明瞭な低エコー陰影となり,CT・血管造影上も陽性となった.その時点で腫瘍生検を施行し高分化から中分化相当の肝細胞癌と診断した.超音波検査で描出される以前に既に病変が存在する小肝癌の例があることは推論されていたが,本症例はそれが超音波検査上陰性から陽性になる過程を観察しえた貴重な症例であり,また何らかの組織学的変化により徐々に画像上明瞭になる例があることを実証した症例である.小肝癌の診断上,肝癌の存在を強く疑う症例では各種画像診断が陰性でもアンギオエコーを考慮することが必要であり,慢性肝疾患ハイリスクグループの経過観察においては超音波検査上腫瘍が描出されない例でも頻回の超音波チェックが必要と思われた.
著者
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吉田 喜策
福岡市民病院 整形外科
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廣重 嘉一郎
福岡市民病院 内科
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本村 廉明
福岡市民病院内科
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中牟田 誠
福岡市民病院内科
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田辺 雄一
福岡市民病院内科
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本多 正直
福岡市民病院内科
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大橋 昌夫
福岡市民病院内科
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