肝細胞癌患者血清におけるトランスフェリン糖鎖変異に関する研究,特にアルファフェトプロテイン糖鎖との関連について
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概要
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肝細胞癌(HCC) 12例,肝硬変(LC) 6例より血清トランスフェリン(Tf)を精製純化し,さらに,HCC 12例中充分量の血清が得られた4例よりAFPをあわせて精製し,その糖鎖構造を微量蛍光標識法であるピリジルアミノ化法を用いて検討した.また,レンズマメレクチン(LCA)ならびにコンカナバリンA (Con A)存在下の交差親和性免疫電気泳動(CIAE)によるレクチン結合性パターンとの対比を行った.HCC由来TfはLCA存在下CIAEにてLC群に比較して,結合性分画の有意な上昇を認め,糖鎖分析にてもフコシル化二分岐型複合型糖鎖の有意な上昇を認めた.また,Con A存在下CIAEでは,HCC群における非結合性と弱結合性分画の和はLC群に比して有意な上昇を示した.さらに,この両者の和とフコシル化率は有意な正の相関関係を示した.他方,AFPにおいてもHCC群での有意なフコシル化二分岐型糖鎖の上昇を認めた.しかしながら,TfならびにAFPのフコシル化率の間には有意な相関関係は認められなかった.このことは,癌化に伴うTfのLCA結合性ならびにCon A非結合性分画の増加,すなわち,糖鎖のフコシル化と多分岐化への変異が同一のTf内で起きているにもかかわらず,フコシル化という共通に認められる糖鎖変異が,蛋白個々により別々に起きている事を示し,癌化における糖鎖調節機構の複雑性を示す結果と考えられた.