動物実験施設の現状と課題
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概要
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昨年の7月から動物実験施設に勤務させていただいております.動物実験施設はより充実した飼育管理, 実験環境の提供を目的として医学部のある多くの大学に設置されております.群馬大学の動物実験施設は昭和56年に設立され, すでに20年以上経過しております.現在, 当施設におきましてはハード, ソフト両面から時代に対応した施設への再構築が求められております.動物福祉に対する社会的関心の高まりや動物権が謳われるようになり, 動物倫理が叫ばれるようになってきた現在では動物実験は常に社会的に注目を浴びております.また昨年4月からの情報公開法の実施に伴い動物実験に関する情報の開示請求が可能となり, 以前にもまして社会的に理解の得られる対応が求められるようになってきました.このような事からその一つとして群馬大学では動物実験委員会が設立され動物実験計画書の提出と, その審査機構が確立され昨年度から実施されております.イヌやネコに関しましては動物愛護の世論の高まりから, 施設では現在イヌの代替としてミニブタに注目し, ミニブタの開発に取り組んでいる独立行政法人の家畜改良センター茨城牧場の協力を得て代替化に着手しております.<BR>マウスにおきましては全国的に遺伝子組み換えマウスが主流となりつつある中, 当大学に置きましても同様であります.これまでの施設環境ではハード面での対応が不十分であるため現在施設内の飼育エリアの拡充を行い, クリーンラックをできるだけ多く設置し, バリア化の整備に努め, ハード, ソフト両面から施設環境の整備と再構築に取り組んでおります.<BR>ラットに関しましては感染症に対するモニタリングから, 施設内のラットに感染症が見られたため, 急遽6階にラットの飼育エリアを設け, 新規搬入に対応していただいております.3階のラットエリアに関しましては現在SPF化に向けクリーニングの最中ですので利用者の方々には大変ご迷惑をお掛けしております.本学はラットの使用量が多いのでマウス同様に飼育環境を更に整備したいと思っております.<BR>動物実験のニーズが広範化しており重要性が増していることから動物福祉の問題点を含めた実験動物学教育も重要であると思われます.最近大学院生や学部学生に対する実験動物学の教育と実習の時間を少しいただいていおりますが, その様な機会に少しでも啓蒙に努められればと思っております.<BR>最後に, 法人化や附置研改組の風潮のなか動物実験施設のあり方が問われておりますが, 遺伝子改変動物, 疾病モデル動物, 異種移植を含めた臓器移植の研究等に対し動物実験の果たす役割は今まで以上に増すことと思われます.今後共できるだけ多くのユーザーの方々に満足した形で利用していただけるように努めたいと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします.