肝硬変を伴わない原発性肝癌に関する一考察 : Hepatitis-B surface Antigen Carrierの非硬変肝に発生したα-Fetoprotein陰性原発性肝癌の1剖検例を中心として
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概要
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日赤長崎原爆病院における過去19年間の原発性肝癌剖検例111例中,肝細胞癌は98例で,肝硬変を伴う原発性肝癌は,98例であった.肝硬変を伴わない肝細胞癌9例につきAldehydeFuchsin法でHepatitis-B surface Antigen (HBs-Ag)の検索を試みた所,慢性肝炎活動型1例中1例,非活動型6例中0,著変のない症例2例中1例の非癌部に,HBs-Agが検出された.血清HBs-Ag陽性で非癌部に著変を見なかった症例は,56歳,男性で,肺結核の治療中,肝細胞癌の発生をみたもので,血清α-Fetoprotein (α-FP)は20mμg/ml以下であった.腫瘍は,被膜に被われ,trabecullar patternを示し,EdmondsonのII型で,多核巨細胞形成,胆汁産生や,癌細胞内に“Hyaline-like material”が見られた.非癌部には,線維増生や,認むべき炎症細胞の浸潤等の慢性炎症性疾患は見られなかった.HBウイルスの発癌性等に示唆を与える本症例を中心に報告する.
- 社団法人 日本肝臓学会の論文