APS装置の試作と金属化合物のケミカルシフトの測定
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概要
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試作したSXAPS装置の測定条件を系統的に変化させることによるAPSスペクトルの分解能の検討をした.エミッション電流を増加し, 変調振幅を増加させるとスペクトルの感度及びS/Nが改善されるが, この場合分解能が悪くなる。分解能を良くするためには変調振幅を小さくし, スィープ電源のスィープ速度を遅くし, ロック・イン・アンプの時定数を小さくしてやらなければならない.また変調振幅とロック・イン・アンプの時定数の変化はそのスペクトルのthreshold値に大きな影響を及ぼす.<BR>バナジウム及びニッケルの酸化物・塩化物表面の観察からVCl<SUB>3</SUB>, V<SUB>2</SUB>O<SUB>5</SUB>はバナジウムに対しておのおの1.2eV, 1.6eV結合エネルギーに変化を生じたが, VOCl<SUB>2</SUB>は0.1eVと他に比して非常に変化が少なかった.またNiO, Ni<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>もおのおのNiに対して0.4eV, 0.5eVの変化を観察した.ニッケルの場合, 他の3d遷移金属に比べて相対的に感度が悪いのは, 3d状態を満たしている電子の数が多いためにフェルミーレベル以上の空の状態密度が低くなっているからであると思われる.結合エネルギーの変化はイオン価が増加するにしたがって増加し, 外殻電子の数が少ない試料ほど変化量が大きく, 外殻電子が多くなるにつれてその変化量は減少する.