木材保存剤としての高分子量ケイ酸 : 無機化合物複合体
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概要
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木材への注入時点では液体で注入後常温で高分子化して木材中に固定される,コロイド状ケイ酸溶液あるいはケイ酸モノマー溶液と無機化合物との複合薬剤溶液の木材用難燃化剤あるいは防腐剤としての性能を,検討した。その結果は,次のようであった。<BR>1)木材中への固定量は,コロイド状ケイ酸溶液を用いた場合に高く,ケイ酸モノマー溶液を用いた場合にはその濃度に依存した。銅,鉄などの金属と複合化した場合には,添加する金属化合物の割合に至適濃度が存在すると考えられ,金属化合物の過剰の添加は溶脱割合が高くなる。しかし,ホウ素を混合した場合には良好に固定され,ケイ酸−ホウ素系化合物によるこの方法はホウ素を木材に固定する方法として優れていることがわかった。<BR>2)ケイ酸とホウ酸などの難燃化性能付与薬剤との複合薬剤で処理した木材は,燃焼試験において,加熱開始から着火までの時間が延長され,着火後300秒間の発熱速度(RHR<SUB>300</SUB>)は薬剤注入固定割合(WI)の高かったスギ材で低下した。さらに,燃焼時の発煙量も減少すると共に,燃焼試験のデータから算出した見かけのフラッシュオーバーまでの時間も延長された。<BR>3)ケイ酸のみでの処理では,大きな耐朽性は付与されない。しかし,ケイ酸と金属化合物との複合薬剤は,防腐性能を木材に付与する。<BR>4)ケイ酸モノマー溶液とホウ酸との複合薬剤は,高い防腐性能を有し,処理木材からの薬剤の溶脱もほとんどない良好な薬剤である。すなわち,ケイ酸溶液に,ホウ素化合物を添加して調製した木材用保存剤としてのケイ酸―ホウ素化合物複合薬剤溶液は,木材中で常温で高分子量の複合体となり,木材中に固定され,処理木材からの薬剤の溶脱が抑えられ,木材に難燃性および高い防腐性能を付与する低毒性の木材用保存剤であるといえる。
- 社団法人 日本木材保存協会の論文
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