蒸着薄膜と超高真空
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概要
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蒸着薄膜は、薄膜の形成とその物性という基礎的な諸問題と全く実用上の要請である電子工学への応用という相異なった立場から、最近の中心課題として注目を浴びている。この蒸着薄膜にみられる諸問題を主として超高真空技術の面から取りあげて、薄膜のもつ性質と現象を残留気体との関連で論じ、あわせて薄膜の成長過程を述べ、密接な関係のある固体表面の問題を蒸着という面で眺めてみよう。<BR>1960年代前半において、薄膜の応用は回路素子の実用化を中心として実用期に入った。とくに薄膜集積回路や半導体集積回路のいわゆる超小形回路の最近の進歩は目覚ましく、生産も量産の態勢がとられている。“高真空での薄膜技術” は安定した製品を生み出し、結実の域に達したとみられよう。すでに、米国では1962年にいたるI.B.M.のBehrndtらの仕事をみるとその発展の経過がよくうかがえる。一方、超高真空蒸着薄膜の研究はCaswellらの仕事をはじめとして注目すべき論報も少くない。かつて再現性のある磁性薄膜や超電導薄膜をつくるには超高真空で蒸着する必要があるとの意見が出され、その可否をめぐって議論がなされたが、未だに余り明確な解答はなされていないようなので、一つの焦点として述べることにする。この問題は多分に蒸着技術に関する面も多いが、むしろ薄膜の形成と深い関連があり、物理的な洞察を必要とする。薄膜の性質とそれが示す現象は複雑で多彩である。また物質も多種であって一辺の解釈であたることはまずできないであろう。多様な方法と扱いをもって当らねばなるまい。まだ未知の分野も多く、理論の未消化も数少くない。現在急速に発展し、開拓されつつある分野であるだけに、以下やや勝手に選び出して述べる事項に過りがあるかも知れない。全貌を明らかにすることはまつ不可能であるので、ただ記述した内容からいくらかでも将来の示峻がえられれば幸である。
- 日本真空協会の論文