鰓の病理組織学的研究―I : ウナギの鰓ぐされ病
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概要
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ニホンウナギ(Anguilla japonica)とヨーロッパウナギ(A.anguilla)の鰓ぐされ病について形態学的に検討し,次の結果を得た。ニホンウナギ・ヨーロッパウナギ共に,初期変化は鰓薄板の炎性水腫,鰓薄板上皮細胞および粘液細胞の活性化で,上皮表面に柱状の集落形成を示すグラム陰性長桿菌の寄生がみられた。この細菌はFlexibacter columnarisと想定された。それ以後の病変経過ではニホンウナギとヨーロッパウナギとの間に著しい差が認められた。ニホンウナギでは,鰓弁が棍棒化する過程で3型に分けられた。第I型は鰓薄板先端部の上皮細胞が増生して,鰓薄板先端部のみが癒着する棍棒化で,第II型は鰓薄板全層の上皮細胞が増生して,鰓薄板全層が癒着する棍棒化で,第III型は鰓薄板基部と先端部の上皮細胞が増生して,鰓薄板基部と先端部が隣接する鰓薄板と癒着する棍棒化であった。棍棒化した鰓弁の多くは循環不全により壊死し,次いで壊疽性炎へと進行して鰓弁が脱落していた。ヨーロッパウナギでは鰓弁の棍棒化は粘液細胞の極めて高度の増生によるもので,鰓弁の欠損はみられなかった。内臓には全ての供試魚に高度の病変が認められなかった。以上の所見から下記の事が想定された。1. 死因は鰓の機能不全による。2. 棍棒化した鰓弁の欠損は循環不全と壊疽性炎の結果である。3. 粘液細胞の高度の活性化と増生を示したヨーロッパウナギはそれらの弱いニホンウナギよりも鰓ぐされ病に対して抵抗性がある。
- 日本魚病学会の論文