日本統治時代の台湾人の生保加入に関する研究 : ―政治的誘因か経済的誘因か―
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概要
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日本統治時代の台湾において生保はかなり普及していた。その理由について,多くの台湾人研究者は,総督府が政策的に台湾人の生保加入を奨励したこと,すなわち,政治的誘因が強く働いたことを主張している。このような主張に対して,本稿は,戦時体制期以前(1905年〜1937年)の台湾生保の成長について,市場メカニズムが働いた結果として生じたことを,当時の新聞,日記,統計データなどの一次史料を駆使して明らかにした。この時期の台湾人の生保加入の動機は多様であり,義理,人情による場合,高額な冠婚葬祭費用を用意するためという場合,さらに特殊な文化要因と称すべき場合などが存在した。このように多様な加入動機が見られる一方,激しい契約獲得競争が繰り広げられたこの時期の台湾生保市場は,総督府の指導による政府主導型ではなく,自由経済のメカニズムが働いていたと言えるのである。