確定給付型企業年金におけるモラル・ハザードと受給権保護
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概要
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確定給付型企業年金の受給権保護には,次のような問題点がある。第一に,加入者期間中に受給権の付与(vesting)が行われておらず,積立不足の解消が困難な場合等は,加入者拠出分を含めて,受給者及び加入者の両方の減額が認められたことによって,積立不足を拡大させて減額を行う企業のモラル・ハザードが誘発されている。第二に,独立性のない年金数理人が積立義務の履行状況を確認しており,年金業務に対する監督権が厚生労働省・国税庁・金融庁に分割されたことによって,受託会社の営業活動などに対する監督が不十分となり,積立義務の回避または減額のための積立不足の水増し等の企業のモラル・ハザードを高めている。第三に,支払保証制度がないため,企業のモラル・ハザードの多くが各年金基金別に放置され,管理されていない。受給権保護のための確定給付型企業年金の一体的な監督と企業のモラル・ハザードの防止のための抜本的な改革が急がれている。
著者
関連論文
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- 岩瀬泰弘著『企業価値創造の保険経営』:―千倉書房,2007年10月,はしがき2頁,目次3頁,参考文献2頁,索引3頁,計算表13頁,本文163頁―