リムルス反応陽性が続いているchronic fatigue syndromeの1例 : 症例報告と文献的考察
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概要
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10年以上もの長期間にわたり全身倦怠感,微熱,関節痛などを主とする諸症状に苦しむ30歳の女性が来院した.他院では,ステロイドや免疫抑制剤なども投与されていたが,寛解・増悪を繰り返していた. 6ヵ月以上続く全身倦怠感,微熱,咽頭痛,リンパ節腫脹,筋力の低下,筋痛,頭痛,関節痛,思考力・集中力の低下などが認められ, Holmesらの診断基準に従い, chronic fatigue syndrome (CFS)と診断した.ウイルス抗体価の検索では,麻疹,水痘ヘルペス,単純ヘルペス, EBウイルスが軽度高値で,ヒトヘルペスウイルス-6 (HHV-6)の抗体価は, 2,560倍ときわめて高値を示した.しかし,末梢血単核球を用いたPCRの検索ではHHV-6特異的配列は認められず,本例におけるHHV-6の関与は明らかでない.リムルステストは陽性で,エンドスペーシー,トキシカラーともに高値を示した.また, NK活性は, E/T比10対1, 20対1ともにきわめて低値を示した.一方, NK細胞の指標であるCD57は末梢血単核球中19.7%と正常であったが, CD16は2.3%と明らかに減少していた.このCD16異常とNK活性の障害に関しては今後の検討が必要である.治療としては,ステロイドを減量し,精神療法を中心に行ったところ,約2週間後より解熱傾向があり, 1ヵ月後には頭痛,嘔気,全身倦怠感などの諸症状とともに微熱も軽減し退院した.以後約1年間,症状は軽減したまま外来に通院していたが最近,頭痛と意識障害をきたして近医に緊急入院した.近年,欧米ではCFSに強い関心がもたれ,患者の支援組織も結成され,広くこの病態の克服に取り組んでいる.ところが,本邦ではほとんど注目されておらず,このような病態は膠原病や更年期障害,心身症などと診断されることが多いと思われる.したがって,今後適切な診断・治療を行うためにも正しい理解が必要である.
著者
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森田 隆子
大阪大学微生物病研究所附属病院内科
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倉恒 弘彦
大阪大学微生物病研究所 ウイルス免疫分野
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向井 徹
大阪大学微生物病研究所
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山西 弘一
大阪大学微生物病研究所
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服部 英喜
大阪大学微生物病研究所附属病院 内科
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木谷 照夫
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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待井 隆志
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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大山 摩佐子
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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金山 良男
大阪大学第2内科
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野島 順三
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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田川 進一
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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近藤 一博
大阪大学微生物病研究所麻疹部門
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山西 弘一
大阪大学微生物病研究所麻疹部門
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向井 徹
大阪大学微生物病研究所麻疹部門
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倉恒 弘彦
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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森田 隆子
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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木谷 照夫
大阪大学微生物病研究所内科
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服部 英喜
大阪大学微生物病研究所臨床部門内科
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