牛の胚移植における黄体と卵胞の共存する例および嚢腫様黄体形成例の受胚牛としての適応性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
牛の胚移植(ET)における受胚牛で,黄体と卵胞が共存する例および嚢腫様黄体形成例について,ETによる受胎性と血中プロジェステロン(P)濃度を検討した.その結果,黄体と卵胞が共存する例および嚢腫様黄体形成例のET当日の血中P濃度は,いずれも卵胞が共存しない例と比べて差がなかった.さらに,ETの前日から当日にかけての血中P濃度の増加量は,黄体と卵胞の共存する例,嚢腫様黄体形成例および卵胞が共存しない例のいずれにおいても,受胎例では1.6ng/ml以上であり,高いことが認められた.黄体と卵胞の共存する例と卵胞が共存しない例の受胎率は,黄体の形態が良好であったA型のものでそれぞれ66.7%,63.9%,黄体の形成がやや不十分であったB型のものでそれぞれ33.3%,25.0%であり,有意差は検出されなかったが,黄体の形態により差のあることが示唆された.また,黄体と卵胞の共存する例において,共存卵胞の破砕および外陰部の所見による受胎率への影響はみられなかった.嚢腫様黄体形成例は,黄体内腔液排除の処置により,黄体の形状の正常化と血中P濃度の増加が認められ,受胎率はこの処置をET前日に行ったものでは58.3%であり,当日に行った場合の40.0%と比べて高かったものの有意な差は検出できなかった.以上の成績から,卵胞が共存していても黄体の形状が正常であれば,また,嚢腫様黄体形成例では黄体内腔液を排除することにより,受胚牛として供用できるものと考えられた.