豚における体外受精とくに体外成熟•受精卵子の雄性前核形成に関する研究
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概要
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本研究は,豚の体外成熟•受精において安定して高い受精率および雄性前核形成率が得られる精子の処理方法ならびに卵子の成熟培養方法を確立することを目的として実施した.得られた主な結果は以下の通りである.1)射出精子を15Cで約24時間保存すると,精子の受精能獲得が促進された.2)凍結融解精巣上体尾部精子は卵子に侵入可能で,得られた受精卵が個体への発生能を有した.3)未成熟卵子を体外で成熟(静置培養)させた場合,卵子を取りまく卵胞細胞の数および培養液中のプロジェステロン濃度は,卵子の第二減数分裂中期(M-ll)への成熟率および体外受精後の雄性前核形成率に影響した.4)成熟培養液に卵胞を添加して振とう培養を行うと,付着した卵胞細胞の数に関係なく卵子の成熟率および雄性前核形成率が高くなった.5)雄性前核形成率の高低に関わらず,体外成熟卵子は成熟および体外受精後共に体内成熟卵子と同様のタンパク質合成パターンを示し,受精6時間後から経時的に25Kのポリペプチドが減少し,22Kのポリペプチドが増加した.6)卵子の受精後の雄性前核形成には卵子内のグルタチオン濃度が関与しており,システイン(0.08mM)を添加した比較的単純な培養液を用いて成熟させた卵子は個体への発生能を有した.これらの結果から,卵子を取りまく卵胞細胞の数,成熟培養液中のプロジェステロン濃度,培養方法(静置培養および振とう培養)および卵細胞質内のグルタチオン濃度が卵子の成熟,とくに受精後の雄性前核形成に重要であることが明らかになった.
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