発語失行の臨床像と回復過程 : 一症例の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
脳の器質的病変により発現する言語障害に失語症とマヒ性構音障害があるが、これらと若干異なるものにDarleyらが提唱したapraxia of speechがある。今回ほぼapraxia of speechのみを有すると考えられる症例に接し、評価、訓練、患者自身の病察を聞く機会を得た。症例:51才、男性、右利き、脳血栓、右手III・IV・V指に軽度マヒ。発症初期は失語症(-)、マヒ性構音障害(-)、その他の巣症状等(-)、WAIS言語IQ107(筆記)、動作IQ112である。この状態にもかかわらず意図的な発話は、ほとんど不可能であった。その後、DarleyらのプログラムやMITを参考に系統的訓練を施行し、発症後約4ヶ月でプロソディ障害が残存する発話となった。本症例の特徴である、構音に限った問題、非一貫的な音の置換、標音文字操作へのごくわずかな影響、プロソディ障害、探索行動等は、Darleyらの述べるapraxia of speechの特徴とほぼ一致するものであった。