1全失語患者におけるコミュニケーション行為および一般的行為の改善経過
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概要
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1全失語患者に対して行なった,言語的コミュニケーション行為(COM行為)や非言語的・記号的コミュニケーション行為(視覚的シンボルやジェスチャーによるもの)以前のCOM行為および一般的行為(目的的な移動行為や対物的な操作的行為など)を対象とした言語治療の経過を報告する.症例は68歳男性で,いわば最重度の全失語であり,状況理解・一般的行為のレパートリーも極めて限られていた.この患者に対し,情緒的なやりとり・目的的な行為自体の活性化を目的としたグループ訓練や,写真による日常生活場面の想起・意識化訓練など一般的行為のレベルからの言語訓練を試みた結果,習慣的行為・情緒的COM行為のみのレベルから,能動的行為・能動的COM行為のレベルへ至るまで段階的に改善が認められた.本症例の障害構造は神経心理学的には,全失語に加え前頭前野の損傷による行為障害などが合併していると考えられた.また段階的改善経過自体はWallonによる乳幼児期の発達段階との大まかな対応を示すと考えられた.非言語的・記号的COM行為レベルもほとんど不可能な全失語患者でも,行為一般のレベルからの訓練によって改善することが明らかとなった.
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