脳卒中後の麻痺性構音障害患者の発語明瞭度について
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概要
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人間は言葉によつて多くの情報を交換し,今日の文明を築いてきた.この言葉を発するということは,簡単なことに思えるが,表現したい情報の概念を形成し,それを言語中枢で言語学的構成に変化させ,末梢構音器官を作動させて発語するのであるから非常に複雑である.その表出言語は幾つかの要棄を持つている.すなわち,表現したい情報内容は勿論のこと,一つ一つの語音の特徴,それらが配列される様式,発声される語音の抑揚,リズム,速度,さらには声の高さ,強さ,音質などがそれである.さらに表出された情報内容や音響学的音声言語は,発語者の聴覚系を通じて発声発語する諸機構にフィードバックされ,そしてコントロールされているので,表出言語は単に言語系のみの機能が関与して構成されるものではない.このように複雑な機構により言語が表出されるのであるから,これらの機構の中で,どこが障害されても雷語障害となりうる.著者は脳卒中にともなつた言語障害例を多く診る機会をえたが,これらの言語障害例は,失語症と麻痺性構音障害に大別される.しかしこれら障害例は老人が多く,聴覚障害,老人性痴呆が加わつている場合も多いそのため脳卒中後の言語障害の治療には多くの困難な問題がある.そこで著者は脳卒中後の麻痺性構音障害について種々検討し,言語療法についても考案したので,その結果を報告する.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文