ひと側頭骨における砂腫様体についての研究
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概要
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(1)目的:ひとの側頭骨における砂鍾様体は古くかかみとめられていた.そして他の腫瘍で死亡した患者にこれをみとめて,重復腫瘍であるとか,また聴力のわるいひとの側頭骨にこれをみとめ,これは,内耳道動脈の栓塞によりおこるものであつて,これが難聴の原因であるとした論文もあつた.今回著港は,この側頭骨における砂腫様体と,聴力との関係を明らかにする目的で,ひとの側頭骨標本337例について検索した.(2)方法:New York大学 Temporal bone bank における側頭骨337をもちいて,顕微鏡下に,砂腫様体を観察し,その存在部位,数について記載した.また死亡前2年以内に聴力のあつた側頭骨34については,聴力図を6つに分類した.(3)結果:i)ひとの側頭骨およびその周囲親織中に,砂腫様体は,内耳道,顔面神経膝神経節,三叉神経半月状神経節,蝸牛導水管,前庭導水管中にみとめた.中耳腔にはほとんどなかつた.ii)内耳道における砂腫様体は15才以後にみとめ,35才位までにその数は増加し,約400となり40才以後は一定となつた.iii)三叉神経半月状神経節における砂腫様体は20才以後の側頭骨の80%,70才以上の全例にみとめた.iv)顔面神経膝神経節における砂腫様体は7才以後にあらわれ年令とともにその発現頻度は増加した.V)舌咽神経下神経節にも砂腫様体を23才以後25耳にみとめた.vi)蝸牛導水管の砂腫様体は15才以後の全例にみとめた.Vii)前庭導水管の砂腫様体は,発現頻度は最もすくなく27才以後にみとめ,337の標本中17%に観察できたにすぎなかつた.viii)顔面神経膝神経節と前庭導水管の砂腫様体の発現頻度との相関は,両者に関係の深いことがわかつた.ix)内頸動脈硬化と膝神経節中の砂腫様体の発現頻度との関係は,あまりなかつた.x)聴力型と内耳道砂腫様体との間には,直接の関係をみとめなかつた.結論:ひと側頭骨の砂腫様体は,年令の増加とともにふえてくる.しかし聴力とは関係はなかつた.また動脈硬化とも関係なく,くも膜のある所にあることより,くも膜からでてくるものと考えた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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