蛋白同化ステロイドによる音声障害の研究
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概要
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目的:蛋白同化ステロイドは臨床上頻用されており,その副作用中,女性の音声障害の予後はきわめて不良である.しかしこの医原性疾患は,まだよく知られていない面が多いので,ここに改めて取り上げ充分なる検討を必要とする研究課題と考えた.研究方法:音声障害の臨床症例検討(女性24症例),人屍体喉頭の光顕下および1,000倍拡大の声帯筋筋線維の直径の太さの検討(13症例),および,SMA雌性白色マウス25匹の同様な検索を行つた.結果:(1) あらゆる年令層の女性に起りうる.局所的肉眼的所見では,異常を示さない例が多かつた.今後,薬剤使用前後の音声検査は必須の条件である.中でも呼気持続時間の測定値は全例短縮の傾向を示し参考となる.(2) 1週100mg投与として1ヵ月400mg以上の投与で発症したものが24例中22例(83%)あり,また生理不順開始から,おそくとも,2週間以内に声の障害を伴う例が過半数を示したので,その投与量や月経異常との相関々係にも注意すべき事を再認した.(3) 人屍体喉頭の声帯筋々線維の直径は,性ホルモン大量投与3例,13〜18μ,中等量投与1例,13〜14μ,少量投与2例9〜12μ,に対し,対照群の女性4例のそれは,10〜13μ,男性3例15〜17μ,の間であつた.(4) 大量投与群ほどその肥大の仕方のバラツキの大なる傾向を示した.(5) 動物実験結果では,3週間の蛋白同化ステロイド投与群5匹(1回1mg,1週2回法で20日目に検索,総量6mg),4週間群5匹(同様操作27日目,8mg),5週間群5匹(同様操作34日目,10mg),8週間群5匹(同様,55日目,32mg)の結果は,それぞれ順にその平均値直径,8.7μ,8.8μ,9.6μ,9.9μ,対照群5週間5匹(1週2回法,落花生油使用)のそれは7.7μでその5週間目同志の間にはに5%の危険率で有意の差を認めた.(6) 音声学的には筋緊張の異常による発声機能不全と考え,今後治療はその筋緊張を高める方向で検討されるべきであろうと推論した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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