鼓室成形術に関する臨床的研究補遺 : 特に術式と乳突洞粘膜病型分類に関する考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
鼓室戒形術の術後成績について,術式及び乳突洞粘膜病型の分類という二つの面から検討した.この場合の術後成績判定には,客観性を持たせるため,点数制を採用し,臨床的経過観察と術前聴力を無視した術後聴力のそれぞれを,0点から3点までの4段階に分け,双方の和をもつて,その症例の術後成績とした.先ず,術式についてであるが,施行した術式を,古典的術式,外耳道保存手術,乳突形成術のうちMuscleを使用したもの.さらにKiel Bone Graftを用いたものの4型に分類し,夫々を上記術後成績判定法によつて,成績を検討した.古典的術式では多少悪い成績であるが,他の3術式ではほぼ同様の結果を得た.又,術式の分類法をtechniqueの面,すなわちapproachの方法から,経乳突手術 経外耳道手術,両者併用手術,外耳道後壁除去手術,外耳道後壁除去及び乳突充填手術,外耳道再建手術の6型に分類し,現在まで文献上に発表されてる多くの術式を,この分類法にあてはめてみるという考察を行なつた.次に,乳突洞粘膜の病理組織学的所見から粘膜病変を,a浮腫型,b細胞浸潤型,c線維型,d小嚢胞形成型,eコレステリン肉芽腫型,f真珠腫型の6つの病型に分類し,術後成績について検討した.b細胞浸潤型では成績が悪く,特に乳突形成術を行なつた例では,不良例が多かつた.又,これまで術後不良例が多いとされているd小嚢胞形成型,eコレステリン肉芽腫型は比較的良い成績であつた.これら術後成績の検討から,病巣を完全に除去でき得れば,良い成績が得られること,及び慢性中耳炎の急性増悪期等の活動性病変のある時期に手術を行なう事は慎重であるべきであるという結論を得た.慢性中耳炎に関する手術方法及び粘膜病型の分類は,現在の所,確立されたものがないので,これらに対する著者の試みに,文献的考察を加えて,ここに報告した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文