中耳手術後性顔面神経麻痺の予後に関する臨床的並びに実験的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的並びに方法:まず中耳手術に合併する術後性顔面神経麻痺の臨床例49例について,保存的治療による予後を検討した.その結果原因の一つと考えられた神経幹の挫滅について,家兎による動物実験を行つた.このため成熟家兎の1側顔神を,改造せる3種の異なる面圧を持つた鉗子によつて一定時間圧迫挫滅し,自然経過を肉眼と筋電図により観察した。結果: A. 臨床的研究にあつては,1) 全症例の完全治癒率は60%,軽快率84%で,不治のもの16%であつた.2) 即発性のものと遅発性のものを比較すると,完全治癒率では差がないが前者に不治の帰転をとるものが多かつた.3) 予後の判定において筋電図検査並びに電気変性反応検査の結果は,重要な資料ではあるが完全な資料ではなかつた.4) 契機となる中耳手術の所見は,予後判定の初めの手がかりとなるが,顔神の露出のみ認められた症例の予後は比較的良好であつた.B. 実験的研究にあつては,1) 全例が臨床的並びに筋電図学的に完全治癒した.2) 圧迫挫滅の作用条件は麻痺回復の途中経過にある程度の相関を示した.3) 本実験程度の圧迫挫滅条件(350g,700g,2500g,5秒〜30分)では,神経軸索の変性はごく軽徴であると思われた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文