耳下腺内リンパ管の微細分布
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
(目的及び実験方法)唾液腺では色素穿刺注入法,その他の方法でリンパ管を現わす事は極めて難しい為,従来その研究は甚だ少ない上に,その成績も研究者によつて一致しない.著者は硝酸銀水溶液局所動注によるリンパ管顕出法と電顕によるリンパ管検索法及び復構法により,耳下腺内のリンパ管の微細分布及びこれと血管との関係を調べて次の成績を得た.(結果)1) 耳下腺の小葉内には血管は豊富に存在するがリンパ管は存在しなし.2) 従つて,耳下腺の分泌にはリンパ管は関係なく,血管が関与する.3) リンパ管は小葉間組織内にのみ存在し,主として動脈に伴つて走る.4) 小葉間結合組織内の導管,静脈に伴うリンパ管も本来は動脈に伴うリンパ管が移行したものである.5) 耳下線のリンパ管は小葉間結合組織内で,小葉の入口近くで直径40μ位の動脈の附近に盲端を以て初まる.6) 小葉間結合組織内のリンパの太いものには弁が存在する.7) 小葉間に於けるリンパの太さは小葉間結合組織の量に比べて遙かに小さい.リンパ管の直径に対するそれが存在する部分の結合組織の幅の比率は大体1:11である.8) 耳下腺内のリンパ管を色素穿刺注入,その他の方法で現わす事が難しいのは小葉内にリンパ管が存在しない事と,小葉間では結合組織の量に比べてリンパ管の太さが小さい為と思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文