全身振動の音声言語に対する影響,特に発声強度と最大発声持続時間について
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概要
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1 目的:全身振動曝露下における発語者の音声言語がその振動によつてどのような影響を蒙むるかを騒音との関連において多角的に検索をしている.今回の実験は発声強度と最大発声持続時間について観測したので,その結果を報告する.2 実験方法:被検者は正常聴力で発語明瞭な本大学工学部学生(男性)の7名である.被検者は振動台上の椅子に正姿勢で腰掛し,口唇前50cmのマイクロホン(Bruel & Kjaer製)に向つて発語せしめた.発語強度は「e,i,u,o,a」の各母音,最大発声持続時間は「e」母音を中等度および強度の強さで,それぞれ3回繰り返し発語せしめ,その音圧レベルおよびその持続時間をsound spectrogra-ph (B. & K.2112型)とhigh speed level recorder (B. & K.2305型)で記録し観察した.これらの測定値は実験条件別に全被検者の平均値で表わし,各平均値について95%の信頼区間を求めた.さらに,発語強度については各被検者の個人内変動(標準偏差)を検討した.負荷振動は5CPS.10CPS,15CPSおよび20CPSの正弦波垂直振動で,その強度は最大耐容強度であり,全身振動と同時に白色騒音をレシーバで両耳に曝露した.騒音強度はレシーバの前面でover all75dB SPLとした.3 実験結果:a 発声強度:各母音とも騒音独単曝露下の方が非曝露時よりも,さらに振動+騒音の同時曝露下の方が騒音単独曝露時よりも発語強度は明らかに増強した.負荷振動数の中では15CPS振動が最も顕著であつた.強く発語せしめても,中等度に発語せしても,両者の成績には大差は認められなかつた.同一条件による3回繰り返し発語の個人内強度変動は全体的にみてその偏差値は小であつた.b 最大発声持続時間:上述の発語強度の測定結果と異なり,振動+騒音の同時曝露下の方が騒音単独曝露下,非曝露時よりもその持続時間は短縮し,殊に10CPS,5CPSの低振動数振動曝露時において明らかであつた.4. 考察:振動の人体に対する振動伝達,共振部位の観測成績およびその他の実験諸成績から推察して,発語強度の増強は音声器宮の緊張増大,胸腹部共振による呼気圧,呼気流の増大であり,最大発声持続時間の短縮は胸腹部共振で呼気流出が断続的,噴出的となるために,呼気コントロールに混乱が起り,呼気消耗が増大した結果であろうと考察した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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