無菌•自然飼育ラットならびに亜硫酸ガス暴露ラット気管の病理組織学的研究
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概要
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近代産業の急速な発達は,種々の公害を生み,今日の大きな社会問題となつている.多くの公害病の中でも罹患頻度の高い大気中の刺戟性ガスによる慢性気管支炎等の気道疾患の発病•病態を究明する目的で,亜硫酸ガス暴露実験を行った.また,その成果を,より理解し易くする為に,無菌飼育ラツト.ならびに自然飼育ラツトの気管盤諸組織の病理組織所見を観察し,亜硫酸ガス暴露群の所見と比較検討した.各実験動物群の病理組織学的観察の他に,組織の顕微鏡的計測法を応用し,数量的に表現した.無蕪動物を研究対象に用いる事は,日常遭遇する自然界における発炎機構の解明に有利である.実験動物はFisher系無菌飼育ラツト34頭,自然飼育ラツト26頭の気管と,亜硫酸ガス暴露実験にはWistar系健康成熟自然ラット18頭を用いた.亜硫酸ガス暴露条件は10ppmの濃度で,1日8時間暴露した.lAから51日間の各暴露期間の動物について観察した.3群の実験動物について気管粘膜上皮,基底膜,弾力線維および気管腺の病理組織学的な変化を比較検索した,殊に,粘膜上皮の杯状細胞と,気管線の形態的変化が,慢性気管支炎罹患時に現れる喀痰の増量に関連することから,粘膜上皮におげる粘液産生細胞数と,気管腺の胆厚の大きさならびに気管腺/気管壁の比率を算定計測した.すなわち,粘膜上皮の粘液産生亢進像は,亜硫酸ガス暴露群および自然群に顕著であつたが,無菌群には全く認められなかつた.また,気管腺の厚さの計測および気管腺/気管壁の比率においても自然群,亜硫酸ガス暴露群は,無菌群よりも大きい数値を示した.次に,無菌動物と自然動物の2群について,気管の支柱であり,発育の示標ともなる軟骨組織の比較観察を行った,すなわち,軟骨巾の計測,軟骨組織の石灰化,異染性および石綿変性について観察した.軟骨巾の大きい成獣に:石灰化現象,石綿変性が強く現われ,異染性は若い動物群ならびに無菌ラットに強く認められた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文