ヒト食道運動の筋電図学的研究
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概要
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全く新しい構想による食道運動の筋電図記録装置を考案した. これはゴム管の所定の位置に3対の環状双極電極を装着し, 管内誘導により上部食道, 中部食道, 下部食道の筋電図を同時に記録するものである. 従来の装置は生体に何らかの侵襲を加えることをさけることができなかつたが, 本法は何ら侵襲を加えることなく行い得る. この新筋電図記録装置により, ヒトの食道運動について得られた生理的, 臨床的新知見について記述する.1. 安静時にヒトの中部食道, 下部食道には時々自発放電と思われる burst 出現を認める.2. 嚥下することにより, 一定の伝播時間をもつて上部食道より下部食道まで burst 出現を認める. また, 多くの場合, 中部食道•下部食道においては burst の反覆するのを認める. この嚥下に伴う伝播放電は空嚥下の場合より水5ml嚥下の場合の方がより活発に, より恒常的に認めうる.3. 中部食道上部に5mlの水または薬液を注入することにより中部食道および下部食道にスバイク放電を認める.4. 中部食道上部に空気10mlを急速送入することによつても中部食道および下部食道にスバイク放電を認める.5. ピロカルピン注射により上記各種放電の増強を認め, アトロピン注射により減弱を認める. アドレナリン, メコリール, イミダリン注射によつては特に影響は認めなかつた.6. 頸部食道摘出例においては嚥下動作により下部食道に burst 出現を認めた.7. 片側迷走神経麻痺例においては嚥下第2相の障害を認めるが伝播放電は正常に認めた,8. 胸腔内食道胃吻合術後症例においては嚥下後上部食道の放電にひき続いて挙上胃管にも burst 出現を認めた.9. 瘢痕性食道狭窄例においては狭窄高度の時は伝播放電を出現し難く, 狭窄改善時には正常なる伝播放電を認めた.10. 特発性食道拡張症においては嚥下に伴う伝播放電は認めるが非常に減弱傾向にあつた. 本例において食道直達鏡施行後の腹痛強度の時, 下部食道に噴門痙攣を思わせる低振幅高頻度の特異な放電を認めた. また, 本例にはメコリール注射により中部食道および下部食道に多数の散発性放電を認めた.11. 食道憩室, 食道裂孔ヘルニア, 食道異常感症においてはその疾患に特異なる筋電図所見は認めなかつた.
著者
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