Cochlear Microphonics による Remote Masking の検討
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概要
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<研究目的> Cochlear Microphonics(C.M) に関する純音相互の作用として, 1940年 Weber が2音の Interference curve として発表している. 1956年 Rilger & Hilger により, 人間に於い♦て Band noise の level が80〜100dBになると, Critlcal band noise の band 巾内及び band 附近で起こる通常の Masking の他に Critical band からはるかに離れた低周波帯域の域値上昇を観察した. 彼等はこれを Remote Masking と呼んでいる.私はモルモットのC.M.に於いて70〜90dB SPLの音圧で, 高周波純音と低周波純音を同時に与えると, C.M. 上に於いて低周波成分が高周波成分により強く抑制を受ける事実を見出し, その成因についての検索を行つた.<実験方法> 音圧70〜90dB SPL 2つの純音f1とf2を任意の組合せでモルモットに与え, 発生したC.M1(蝸牛基礎回より誘導せるC.M.), C.M3(蝸牛第3回転より誘導せるC.M.)を自動周波数分析記録装置により Spectrogram を記録. この Spectrogram 上の1音単独時のC.M.f1, C.M.f2の強さと, f1, f2を混合した時のC.Mf1, C. Mf2の強さを比較検討した. なお純音と Band noise の組合せも行つた.<結果> 2つの強い純音を同時に動物に与えて発生するC.M.に於いて, 高音成分が低音成分をMasking する現象を見出した.純音対純音の組合せは, 1kHzと3kHzを中心にして行つたが両者の間に特別の差を認めなかつた. C.M1とC.M3の成績を比較しても蝸牛の誘導部位による Remote Masking の差はみられなかつた.純音と高周波 band noise の組合せにても純音同様に Remote Masking が見られた. これらの実験結果を従来報告されている聴覚の生理学的情報を基にして考察した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文