ヒトの聴覚性大脳誘発反応の回復過程
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概要
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1. 目的加算平均法によるアナログ型コンピュータを用いてヒトの頭皮上から非手術的に得られる聴覚性大脳誘発反応を得て, 他覚的聴力検査に用いるべくその回復過程を精査し, 併せてこの反応の生理学的機構を明らかにするためこの実験をした.2. 実験法被検者は18才から30才までの正常聴力を有する成人を対象とし, 音響刺激は中心周波数が2400Hz, 70dB SLの強さの1対からなり, この刺激時間間隔が夫々10msecから10秒まで自由に変化させ得るようになつており, 被検者にイアクション付きレシーバで与えられる. この1対の音刺激は第1音を対照用とし第2音を実験用とし, 30回から50回まで加算し, その波形のN1-P2成分を比較検討した. 一方単耳に1対の音刺激を与えるのみではなく, 1対の音刺激のうち第1音を右耳に与え, 第2音を左耳に与えて両者の反応の差をも測定した.3. 実験成績刺激時間間隔が10msecから100msecでは単耳刺激, 両耳交互刺激いずれも誘発反合は1つの合成反応としてみられ刺激時間間隔が50msec以下では2音による合成反応は1音のみの反応より大き??攀??椀?? 刺激時間間隔が単耳の場合は200msec以上, 両耳交互刺激の場合は150msec以上になると第2音による反応が独立して得られ刺激時間間隔が約1秒程度までは後者の場合の方は第2反応の回復が速やかに行われた. 両耳交互刺激にせよ単耳刺激にせよほゞ完全に回復が行われるのには約6秒前後であるが, 統計的にみて完全に第2反応が回復するには8秒から10秒を要した. この場合, 個人差が可成りみられ回復の早いものは4秒程で完全回復が行われることもあり, 又ある被検者は10秒を要する場合もあつた, 然し我々臨床診断上使用する場合の刺激時間間隔は10秒で充分であると思われる.4. 抄録20才から30才までの正常聴力成人に中心周波数2400Hz, 70dB SLの強さの1対の音刺激を与えて30回から50回コンピュータを用いて聴覚性大脳誘発反応を加算し回復過程の実験を検討したが, 完全回復は Davis 等の述べるごとく10秒前後であり, 加算回数も40回程で充分と思われた. 又1対の音刺激を単耳と両耳交互に音刺激を与えた場合の第2反応の回復過程が異ると云う事実は聴覚路が末梢では非交叉しているものの, 中枢ではどの程度に交叉しているかが問題となるうるであろうが, 今後の研究を待たねば判定は出来ないと思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文